最高裁判所第二小法廷 昭和45年(オ)64号 判決 1970年5月22日
上告人
村山保平
外一名
代理人
石丸勘三郎
石丸九郎
被上告人
浅沼ふな
代理人
長瀬秀吉
吉田和夫
川口雄市
崎山利秋
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人石丸勘三郎、同石丸九郎の上告理由第一点について。
不動産賃貸人が死亡し、数名の者が共同してこれを相続した場合には、賃貸物を使用収益させるべき賃貸借契約上の債務を相続人ら各自が不可分に負担し、賃借人は、相続人の一人に対しても右債務の全部の履行を請求することができるものと解すべきである。したがつて、訴をもつて賃借権の確認を求める場合においても、共同相続人のうち争いのある者のみを相手方とすれば足り、争いのない者を相手方とする必要はなく、賃借人から賃貸人の共同相続人に対する賃借権確認の訴は必要的共同訴訟ではないと解するのが相当である。よつて、被上告人が本件土地の賃貸人の共同相続人中上告人村山保平のみを相手どつて提起した本件訴を適法なものとして、審理判断した原審の措置に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第二点ないし第五点について。
所論の各点の原判決の事実認定は、その挙示する証拠に照らして肯認することができ、その認定した事実関係のもとにおいて、被上告人が本件土地に対する賃借権を取得しているものとした判断は正当であつて、右認定・判断の過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および右事実認定を非難し、さらに、原審で主張しなかつたかまたは原審の認定に副わない事実に立脚して原判決の違法を主張するものであつて、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(草鹿浅之介 城戸芳彦 色川幸太郎 村上朝一)